第123回
マジで怖いぜ カンタン刑
 おそらく誰にだって大なり小なり幼き頃の嫌な記憶があると思う。
 父親の働く工場の社長の娘がたまたまクラスメイトで土下座を強要させられたあげく足でイかされてしまったとか、満面の笑みでヘビの死体を鞭のように振り回す友人に足でイかされてしまったとか、何の気なし山奥で熊に会ったと嘘をついてしまったがために猟友会全員に足でイかされてしまったとか、そういう誰もが経験してそうな嫌な思い出だ。
 ……僕にもある。
 
 小学生の高学年の頃に、父親の本棚から式貴士の短編集『カンタン刑』を勝手に拝借して読み、死ぬほど怖い目にあったのだ。……マジで地獄の釜の蓋が開いたかと思ったぜ。日野日出志を読んだ時と同等、もしくはそれ以上の恐怖であった。
 当然のように夜、トイレに行けなくなり、いくら怖い状況だろうとラオウなら絶対にへっちゃらだ、ラオウなら完全完璧に打ち砕くはず、などと布団の中で悶々と考え続けた。北斗の拳のラオウを自分に投影することで必死に恐怖に耐えていたのだ。
 僕をそんな目にあわせた『カンタン刑』が大復刻!
 この年になってまたラオウに頼ることになるかもしれないのか……というプレッシャーを感じつつも、好奇心を抑えられずに再読! 
 こちらもう大人! ちょっとやそっとのことじゃ怖がったりなんて……怖ぇよ! マジで怖ぇよ! なんだ、コレ! 怖いよぉ! 助けて!
 色あせなさすぎ! どうなってんだコレ! ふざけんなよ、エーオラッ!
 極悪な犯罪者である草田八郎にくだった判決は死刑ではなく、カンタン刑だった。カンタン刑は死刑より怖ろしいと言われる刑罰。これを受けた犯罪者は心身共にボロボロのぐちゃくぢゃになってしまうのだが、それがどんな刑であるか一般の人に伝えられることはない。いったいカンタン刑とはなんなのか? 草田八郎の一人称つづられる恐怖の刑の内容とは?
 ……カンタン刑の内容がマジでえげつない。人間の想像力の限界の向こう側に行っているとしか思えない。邪神かなにか書かされたんじゃねぇのか、これ。
 ……子供の頃は恐怖しか感じなかったのだが、今になって読むと、胸が痛くなるほど感傷的で情緒的な短編な部分もあった。そういった切ない部分があるからグロが光り、グロの中でまた切なさが光るのだ。
 いや〜ここらへんの巧みなテクニックは本当に凄いですよ。怖くて滅茶苦茶に面白い一冊。超オススメ!
 んじゃ、今から北斗の拳のラオウ編を一気読みするんで、んじゃ、また。