第121回
雪女がエロい 姫神の本
 冬の森に少女がぽつりと立っていた。
 肌は白く、服もまた白い。そのせいで、雪深い風景に埋もれてしまいそうに見える。
 しかし、誰が見たとしてもそこにいる少女に気づくだろう。
 なぜなら、はっとするほど少女が美しいからである。
 胸は膨らんでおらず、生理はきていない。
 着物から突き出た手足は細く長く筋張っていた。
 物憂げな顔をしていた少女の目が、怖ろしい物を見たかのように見開いた。
 全身で鈍色の空をあおぐ。
 天から舞い降りる赤色の粒が、透き通るような白い肌に、返り血めいて点々と点々と……。
「……あかいゆき」
 つぶやく口元が淫猥に歪んだ。
「赤い雪」
 匂い立つような喜悦が、少女の口端に浮かび上がった。
 
 少女は雪女である。
 何百年も昔、幼かった雪女は山姥の垂れた乳と生理を笑った。罰としてかけられたのは性の目覚めを封じる呪い。数百年に一度の赤い雪が降るまで解けない呪い。その雪が降った。
 ――この気持ちは、なに?
 幼いままだった少女は一度に襲いかかる変化に戸惑う。胸が早鐘を打つ。
 下腹部が、ひどく熱い。
 得体の知れない塊を、焼けた石のような物を、腹の底に入れられたような感触。
 股のあだにある割れ目から、熱がじわり、と透明な液となって染み出る。
 なにをするかはわからないが、なにを求めているかはわかる。
 男を欲していた。
 月のように白く、小鳥のように可憐な少女は性に狂い性を貪った。
 雪の降る間、妊娠と出産を繰り返し、雪が止むと共に雪女は溶けて消える。
 残された子もまた赤い雪が降るまで大人になれない。これは一族を縛る無限の鎖――。

 
 ……なんてエロゲーのプロットですか? 新作の宣伝ですか? などと思った輩もいるだろうが、そうじゃねぇんですよぉ!
 こいつは日本で女性の神様がどのように祭られ、どのような信仰をされてきたのかを紹介した学習研究社『姫神の本』に掲載されていた物語だ。
 あまりに激しく感動したので、普通の精神状態では抜粋できず、心情やら情景やらを感情おもむくままにどんどん付け加えに付け加えちまってもうなにがなんだかになってしまったけど、ストーリーはまんま。
 近世になって成立した雪女と山姥の物語らしいんだが極悪に儚くて切ねぇ物語じゃねぇですか! ビバ江戸時代。萌えツボに外見は少女だけど高年齢っていうのがある。『月姫』のアルクェイドとか『ネギま!』のエヴァンジェリンとか。そういう女の子ナイスって気持ちが江戸の人にもあったんだろうか?
 ……前にチラリと書いたけど……これはエロゲーの元ネタになるなぁ、と。わ、私が最初に元ネタにしようと思ったんだから先に使ったら許さないんだからね! っていうか、こんなやすやすとパクったら発掘した人に怒られるな。発掘した人、マジ凄い。
 いや〜、こんな話があるなんて古典的な資料っていうのは豊饒なんだなぁ。