第117回
スランプになったら読め 悪魔の辞典
 人間、スランプという厄介なもんがある! スランプなんて大げさな言葉を使わんでもなんとなく不調という精神状態の時がある。
 どうもなにを書いてもうまくいかぬ。というか、そもそもなにを書いたらいいのかよくわからぬ。ファックを千回くらい連呼してもどうにも書けぬ。なんとなく本棚を眺めて、ぼぅ、としたり、一日五回オナニーしても書けぬ。そんなダークネスな気分をなんとかしようとなんとなく手に取るの一冊が、フレッド・ゲティンクス『悪魔の辞典』である!
 本作は世界最大級の西洋の悪魔に関する辞典だ。著者はなんと三千ものデーモンの名前を採取しているのである。凄ぇ! その徹底した調査っぷりは本書をパラパラと捲るだけでイヤというほどよくわかり、こいつ半端じゃねぇな、と誰もが思うだろう。この強烈な仕事っぷりを見て、僕もガンバロウッ! と前向きな気持ちに……というわけじゃねぇ。
 僕がスランプにならったこの本を読むのは、この本に書かれていることがすべて妄想の上に妄想を積み重ねた妄想のミルフィーユ状態になっているからである。
 ぶっちゃけた話、悪魔なんて妄想の中にしかいないわけじゃないですか。
 先人の妄想の産物で生まれた存在に性格付けをしたり、新しい設定をつけたり……そんなどうでもいいこと(いやどうでもいいことじゃないことだとはわかっているが)を淡々とやってきたのが人間なんだ! そう思うと、僕のスランプなんてどうでもいいじゃねぇか、楽しく妄想してりゃそれでどうにかなるべよ! という楽な気持ちになるのだ。
 しかも素人な僕には専門的すぎて読んでもよくわからん項目が多く、ますますどうでもいいじゃん、という気持ちが加速し、楽な気持ちになる。
 プラエスティギアトレスの項目を書き抜いてみよう。
「エノク文献(エノクのデーモンを見よ)によば、デーモンの位階の五番目にあたる。プラエスティギアトレスに属するデーモンは、黒魔術をおこなう者のために奇跡を模倣する。この位階の君主はサタンである。黄金十二宮のデーモンも見よ。」
 どうですか、これ! このわけわからんっぷり! このうどうでもいいっぷり!
 そんなこと考えて誰が特すんだよ! 考えなくてもいいじゃねぇか、こんなこと!
 いや、本当に楽な気分になるわ〜。
 スランプなんてエノクのデーモンを見たら忘れてしまいますよ。
 というわけで、これから黙々と『悪魔の辞典』を読みますんで、んじゃ、また来週ッ!