第114回
筋肉祭りだ! 大帝の剣
 肉の説得力っていうのがあると思う。
 例えば強い格闘家の肉の付き方って独自で凄いもんがあるじゃないですか。ピーターアーツの太股は人を蹴ることに最適化された肉だなと思うし、ノゲイラの長い腕は首を絞めるのに最適化された肉だと思うし、ヒョードルの全身は素手で人を殺すのに最適化された肉だと思うし、ノブハヤシの全身は次元を超えたサムシングを感じるのに最適化された肉だと思う。
 飢餓の国の子供の手足についた肉とか、エロいデブの腹の肉とかでもいい。
 言語として、メッセージとして、魂として、見る人の心に伝わってくる肉というものがあるのだ。
 
 というわけで今回紹介するのは作・夢枕獏 画・渡海の『大帝の剣』だッ!
 うおおん! 筋肉ッ! ビバッ、筋肉祭りだッ!
 なんッスかこの筋ファッキン肉は! とにかく筋肉ぅ〜ッ!
 筋肉筋肉書いていても話は進まないので先に行くぜ、筋肉。
 舞台は江戸時代初期。筋骨隆々で腰に日本刀の大小を差し西洋の大剣を背負った万源九郎が主人公。
 彼は誘拐された娘を助けて欲しいとの依頼を受けて、悪党どもがいる森に向かう。
 同じ時、森には徳川に仇なす血筋の姫様を守る者と殺す者がいた。
 凄惨な戦いの中で、彼らは、船のような形をしたモノが空から落ちてくるのを目撃する……という夢枕獏の未完小説の漫画化した作品。映画化もされたので知っている人も多いだろう。映画は未見だが、小説は自信をオススメできる。
 それはさておき漫画の話だ。
 いや、もう、おまえらこれはマジで凄ぇよ! 
 なにが凄いって絵だよ、絵ッ! 
 超強烈にド迫力なのだ。特に人体の描き込みが凄ぇ! 
 筋肉の一つ一つが自己主張しているのだ。筋肉が喋っているのだ。もうペラペラと雄弁にしゃべりまくってやがる。
 こういう筋肉にこだわりのある作家は、異形な肉体を描いてしまいがちだと思うのだが、バランスはまったく崩れおらず、全体のフォルムはとても美しいものになっている。
 ぶっちゃけた話がストーリーは一巻じゃあまり進んでないし、それほどぐいぐい読者の興味を引っ張る展開じゃない。
 だが、その不備を補ってあまりある筋肉ッ! ビバ筋肉!
 ストーリーはこれからどんどんおもしろくなっていくと思うので、とにかく最初は筋肉からのメッセージを全身で受け止めてぐいぐい読んでいけってばよ!