第97回
青春物の傑作 ブラバン
せっかく読書をするんだから、読むならやっぱり青春物だろ!
甘酸っぱくて切なくて、大切ななにか、とした表現できねぇもんがギッシリとつまりきった本を読むこの喜び! 読書って楽しいぃ、と心の底から思えるってもんだ。
 僕は青春物が好きすぎるがために、オヤジの葬式では読経している坊主の横で「夢見る頃を過ぎても」を読みふけって遺産相続問題で信じがたいほど不利になったり、マットプレイの最中に「夜明けまで1マイル」を読んで号泣し風俗嬢を唖然とさせたり、大日本プロレスのデスマッチアイテムに「ハチミツとクローバー」を混入してアブドーラ小林を困惑させたり、時と場所と空気を読まずにあらゆる場所で読みまくってきたわけですよぉ!


 というわけで今回紹介するのは津原泰水『ブラバン』だ。
 八○年に高校生だった吹奏楽部のメンバーが、バンドを再結成しようと二十五年ぶりに集結する群像劇だ。吹奏楽などの音楽に夢中だった高校生達の青春と現代を生きる大人となった彼彼女らの姿が交互に、さまざまな音楽の登場とともにえがかれている。
 おもしろい作品なのだが、半端じゃなくキャラクターの多い作品である。
 なんせ三年度分の吹奏楽部の部員が登場するのだ。部員と顧問を合わせると三十四名である。しかもその一人一人にエピソードがあるというのだから……ぶっちけた話がけっこうきつい! 人間関係を把握するまでは誰が誰だかさっぱりわからなくて……もうねぇ。挫折しかけましたよ、何度も。
 だが、しかしである。
 なんとなく人間関係がわかってきた中盤あたりから、おもしろくておもしろくて止まらなくなった。
 まずキャラクターが多いことで生まれる重層感。そして四十歳な人々のストーリーと高校時代のストーリーがからみあう重層感。
 この二つがからみあった時に、とんでもなく深みのある物語が生まれるのである。
 この独自の味わい深さは、序盤の辛さを乗り越えてでも味わうべきである、絶対!
 青春物を読んでいて、このキャラクターは大人になったらどうなるんだろうなぁ、なんて思うことがあるじゃないですか? 
 本作ではそれがハッキリとわかってしまうのだ。そういった部分がおもしろくもあり切なくもあり。あぁ〜いい本ですよ、これ。