第96回
強烈な疾走感「ハル、ハル、ハル」

 ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ! 古川日出夫は危険です、マジで! こんな危険な作家を放置しといていいのかよ!
 諸君らはぐだぐだエロゲーをやっているヒマがあったら……いやあっていいんだが、というかないと具体的に困るんだが、とにかく取りあえず今だけは、今日だけは中断して本屋に走るか、ネット書店にアクセスして古川日出夫の短編集「ハル、ハル、ハル」を買うんだよ! 買いまくるんだよ!
 収録されているのは、名前にハルが入った少年と少女と中年男がある目的に向かって疾走する「ハル、ハル、ハル」。あなたに向かって日記をつける女性の物語「スローモーション」。年上の女性を愛する男と犬達が暴走する「8ドッグズ」の三編。
 まぁ、とにかくストーリーなんか今はどうでもいいんだよ!
 いや、どうでもいいってことはないんだが……まぁ、とにかくそれはそれとしてだ!
 この疾走感のある文章はなんだ?
 速いッ! 
 速いッ!
 速いッ!
 マッハだ、ジェットだ!
 疾走している。走っている。全力疾走している!
 もうどんどん進む、進む、進む!
 以前から古川日出男は疾走感のある作品を書いてきた。だが本作は、今までのどんな作品よりさらに速い! 文章なのに、目で追えないほどの速さだ。
 ……ここで僕が書いている速さとは、物語の展開が速い、という意味ではない。まったく違う。そこだって速いよ、と言う人もいるかもしれないけど、僕にとってそこはこれっぽっちも問題じゃない。
 速いのは文体。こんな疾走感のある文章を人間はどうやったら書けるのだろうか? 驚愕しながら僕はそう思った。
 古川日出夫の疾走感は生きている人間の感情のスピードだ。ずーっと流れる人間の感情の文章だ。ただ速いだけでなく、その速さに読者を無理なく巻き込む文体の妙は、素晴らしいテクニックとしかいいようがない、マジで。
 この文体があるからこそ、物語は疾走感を持ち生き生きと走り出し、読者はその物語にスピードを見るのだ。
 物語に巻き込まれる喜びをジンジンに感じるのだ。
 疾走感に喜びを感じるだなんて読書をしたのは初めてかもしれない。このスピードを経験しねぇだなんてオラ、信じられねぇよ! おまえらも走り出せ、スピードに乗れ!
 走れッ!