第92回
歴史好きならこいつだ 紅嵐記
 おまえら歴史好きだろ? 乱世が好きなんだろう?
 戦国時代と三国志と二次大戦が好きなのは当然として、おまらのモラルが問われるのはその先なんですよ。源平か? 太平記か? モンゴルか? 十字軍か? 百年戦争か?
 音楽を好きな連中がどんな曲を聴くの? と聞いてきて「キミ、こういうのが好きなんだ?」「へえ〜プログレなんか聞いてんだ?」とやたら「〜〜だ?」な口調で人を小馬鹿にした感じで答えたりするじゃないですか。音楽の趣味程度のことで僕の何がわかったていうんだよ、アホが!
 とにかく下手な答えを返すと、それと同じ目にあうわけですよぉ!
 ズバッと答えて相手をびびらしてやらなきゃいけねぇわけだ。男っちゅうのは、周囲を威圧してビビらすために全力を費やさなきゃいけない時がある。
 それが今なんだよ! なんでかはよくわからんけど!

 というわけで今回紹介するのは藤水名子の『紅嵐記』だ。
 物語の舞台は元が明に変わる激動の時代! 
 モンゴル帝国の初期を舞台にした作品はいっぱいあるじゃないですか。なんせチンギス・ハーンという大英雄がいるからね。
 だけど元末となると、まったく思いつかないと思いませんか?
 せいぜい朱元璋がらみでちょっとあるくらいでしょ? それでさえ簡単に作品名は思い出せないし。
 戦国時代物や三国志物はキャラクターや大まかな流れを知っているという安心感がある。だけど元末物となると、朱元璋がモンゴルを北へ駆逐する、って程度のことかしかわからないじゃないですか、普通。
 だから、入っていけるかなぁ? 
 などと思う人もいるだろうけど、そんな不安は一切不要だと知れ! 
 本作は、立場の違う数人の男女の視点で書かれた群雄劇で、料理人を目指す元貴族、活発な少女、海賊の男などなど、それぞれ個性的な人々が登場してだれることなく一気に読めてしまうぞ! 
 元末がこんな劇的な時代だったなんて知りませんでしたよ。
 ただ、後に明を建国する朱元璋は後半からの登場で、激動の時代がこれからも続くというところで話は終わってしまう。続編を早急に出版して!