第90回
わかったから『失われた探検家』を読んでおけッ!
 OKOKOK!
 わかったわかった、わかったって!
 わかったからみなまで言うな、タココラ!
 おまえら、中二病だなんだと他人を批判しておきながら……本当は耽美で不思議な話が好きなんだろ? わーってる! わーっとる!
 だからといって、ゴスロリ少女が喜びそうな作品にもライトノベルにも手を伸ばしたくないんだろ? おまえらの複雑な精神状態はよーくわかったから、僕に任せとけ。

 おまえらはパトリック・マグラアの全短編が収録された『失われた探検家』を読んでおけばOKだ。それで大丈夫だから安心しろッ!
 少女でグロでゴシックで吸血鬼で殺人鬼で妄想でSFで精神病で! という感じの作品集だ。
 もうこういうのを求めまくってんたんだろ? 
 字面を見ただけでビチョビチョに濡れちまってるんだろ?
 テメーらの牝の匂いがモニター越しにここまで届くんだよ、オラッ!
 微妙にゴスロリ少女もライトノベルも避けた位置にいるので、おまえらの自意識もバッチリとガードされてるぜ!
 少女が家の庭で瀕死の探検家を見つける、という寓話っぽい作品で成長とともに失っていくなにかに想いをはせるもヨシ!
 殺人鬼にインタビューをするという話で、不安な気分になるのもヨシ! 
 精神科医の妄想に超怖い気分になって転げ回るもヨシ!
 広大な屋敷に住まう農園主一家の没落の残酷話に戦慄するもヨシ!
 核戦争中でシェルターに隠れた家族の陰惨な話に身震いするもヨシだぜ!
 これらの短編集に共通しているのは妄想という部分だろう。妄想によって見えないものが見え、妄想によって人を殺し、妄想によって現実が狂う……。
 本作を読めば、妄想という言葉の持つ広がりをイヤでも実感できるはずだ。そして、ある意味、手垢がついたともいえる妄想というテーマを自在に操り新鮮な驚きを感じさせてくれる作者の筆さばには、感服するしかないだろう。
 そしてその妄想の方向性が、僕らの好きななにかをピンピンに刺激するのだ。それはもうむき出しのクリトリスをヤスリで擦るかのようにな!
 というわけで気になったら読んでおけ、オラッ!