第89回
泣ける ミミア姫

 おろろーん! おろろーん!
 ぶえっふっ! ぶえっふっ!
 なにこれ! 田中ユタカ『ミミア姫』が超泣けますよ! ぐふりっ。
 エロゲーなどでえがかれる地獄の底のクソのように安っぽい別れや死などのシナリオで充分に泣ける僕には、ヘビー過ぎる! 涙腺がぶっ壊れそうだ! なにこれっ!
 連載で読んでいた時はピンと来なかったけど、単行本でまとめて読んだら、もうダメ! 超ダメ! おもしろすぎます! 
 ストーリーはヒロインの女の子が、家族や身近な人から沢山の愛をもらって成長するというもの。小さな体で精一杯、真っ正面から愛を受け入れるヒロインの姿がもう健気で切なくって……。愛を受け入れることがこんなに大変だなんて!
 ……ってこういう書き方をすると18禁みてぇだがそうじゃないからな! 肉体を使ったそういう話は一切ナシだから安心したりがっかりしながら読め。
 話としての優劣を無視して言うなら、愛されないことで泣ける話なんて誰にだって書けると思うのだ。シェークスピアだろうがキミだろうが僕だろうが間違いなく書ける!
 だけど、多くの人から愛されることで泣ける話を描くのはとんでもなく難しいと思うのだ! しかもその愛から逃げるのではなく、ちゃんと受け入れることで泣ける話を書くのは難しいだろう。
 同じように誰かがいなくなることで泣ける話だって誰にでも書けるだろうが、誰とも別れず見守られることで泣ける話を描くのは難しいだろう。
 エロまんが家時代からずーっと一貫して愚直なまでに愛を描いてきた田中ユタカだからこそたどりつけた境地なのだろう。そうやすやすとこんな話は書けないはず!継続は力なりという言葉をこれほど鮮烈に感じたことはねぇ!
 愛とはなんなのか? 
 いろいろな人々がずーっと考えてきた疑問に田中ユタカはある程度の新しい答えを示すんじゃ? どえらいことがはじまってるのかもしれねぇぞ、これは! ……いや、ちょっと過度な期待をしすぎかとも思うが、今の田中ユタカにならいくら期待したっていいだろう、マジで!
 いったいどういう世界観なのかわからない、どういう方向を目指しているのかわからない、という不満はあるものの、まぁ、そういう所にこだわる話でもねぇだろうしな。
 とにかく僕は大期待だ。すげぇもんを見せてくれ、田中ユタカ!