第77回
時代小説好きだけ買え! 時代小説盛衰史
 時代小説盛衰史…なにやらただごとならぬやる気を発散しているタイトルだ。
 …時代小説盛衰史。
 …時代小説盛衰史。
 慄然とするほど硬派である。
 それゆえに今回に限っては、読め! とか買え! などとは言えねぇ。
 なんせ高いし分厚いし、時代小説に興味がない人は読んでいてひたすら苦痛だろうからだ。
 まぁ、買うか買わないかは、このレビューを読んで決めればいいじゃぇか!
 というわけでさっそく本題に入る。

 本作は明治から現代までの時代小説の歴史を、さまざまな作家についての溢れんばかりのエピソードを織り交ぜながら書ききった一冊だ。
 この労作っぷりはマジで半端じゃない! 
 なにが半端じゃないってまず圧倒的な資料性の高さ。
 これだけでも凄いのに、そこに物凄い数の、なんでそんなこと知ってんだよ! と叫びたくなるような時代小説家のエピソードが挿入されるのだ。
 まるで作家当人が自分のページを書いたかのように、細かな出来事まで書かれているのだから驚くしかない。いったいどうやって調べたんだよ、これは!
 僕が興味を引かれたのは昭和初期の小説家が、挿絵画家の関係について「野球ならば、投手と捕手のバッテリー」といっているところ。
 なんだか今のライトノベルを表すような言葉だと思う。昭和初期に作家と画家がそういった関係を築いていた、というのは考えさせられるものがあるじゃねぇですか。
 他にも「それでは諸君、さようなら!」と大きな声で叫んで病死した佐々木味津三や直木賞を受賞した当時、まだ新聞記者だった司馬遼太郎がなかなか原稿を書けない同僚に頼まれて自分で淀みなく<司馬遼太郎の横顔>という記事を書いた話など、作家の個性が垣間見えるエピソードがてんこもりで、満腹感は壮絶極まる! 
 時代小説好きなら確実に楽しめて驚ける一冊だ! 
 そして、それ以外の人には確実に楽しめない一冊だ!