第76回
事実と妄想「鬼がつくった国・日本」
 今さら僕が書く必要もないだろうけど、伝奇作品にはヤバげな過去が必要だ!
 主人公のヤバげな能力はヤバげな先祖から受け継いだ凄くヤバげな血のせいだ!
 ヤバげな倉にかなりヤバげに眠っていた古文書!
 ヤバげな江戸幕府の裏でヤバげに暗躍したヤバげな隠密から伝わるヤバげな武術!
 そういっはバックボーンがあってこそ、伝奇作品は伝奇作品たりうるのである。
 そういったものは想像力のみでぶち作り出すより、元ネタがあった方がリアリティが出るというもの。
 だったらいったいどのようにそのネタを見つけりゃいいのか?
 どのように思考すれば歴史的事件をネタになりそうな角度からみることができるのか?

  鬼=歴史の闇で動いてきた人々、というような定義をもとに日本史を見つめ直した小松和彦と内藤正敏の対談集『鬼がつくった国・日本』はそのやり方がよくわかる一冊!
 僕は高校生の時にこの本を読んで尿意を忘れるほど興奮し、オカルト関係のおもしろさに開眼した。
 ……本書は一般的な意味でのオカルト本ではないが、オカルト本来の意味である「隠された物」という意味ではオカルト本と言っていいだろう。現在、オカルト関係のコラムを書いてお金をいただいている身としてはファッキン感謝してもしたりない一冊である。
 今読み直しても本作のおもしろさはまったく色あせちゃいなかった!
 権力者側からではなく、権力に排除された人々が日本の歴史でどのように活躍したのかを資料と妄想をフル回転させて露わにしていくこのやり方はまさに伝奇小説! 対談している当人達もそれを意識しているせいか過剰に話をふくらませるところがあるけど、おもしれぇんだから問題ナシだぜ!
 伝奇小説を書きてぇ! などと思っている若人は絶対に必読だ! 日に四度、読んどけ!

 ……最後に本作でふれられている東北地方で語り継がれていた浄瑠璃『田村三代記』がかなりの萌え伝奇なので紹介しよう。

 次代は平安時代末期。天竺からきた魔王の娘である立烏帽子が伊勢の国の鈴鹿山にいて、日本転覆を計画していた。追討を命じられて鈴鹿山に立烏帽子を倒しに行く田村利仁の前に、巫女さんの格好の美少女が登場。なんと彼女が立烏帽子なのだ。田村利仁はこんな可愛い女の子を殺していいものかと悩むが、気を取り直してバトル開始。立烏帽子はかなり強く、お互いに秘術を駆使するが、なかなか決着がつかない。そのうち立烏帽子が結婚してくれと言い出して……。

 完全にライトノベルのストーリーじゃねぇか!
 巫女さん姿の魔王の娘に求婚されるって! なんかもう終わってる!
 昔から日本人はこんな話に親しんでいたのかよ! 感動だ!