第73回
『サーカス団長の娘』で本棚を凶器とせよ!
 本棚に入れておくのが恥ずかしい本、というものがある。
 エロ本などを思い浮かべる人もいるかと思うがそうじゃねぇ。エロ本を堂々と本棚に入れておくなんて男らしい。そんな野郎は飾らない男としてモテモテに違いない。
 恥ずかしい本の代表者はなんといっても『サザエさんの秘密』だろう。一時期物凄く話題になり、物凄い勢いで消えていったこの本を持っているということは、ブームに安易に乗ってしまう薄っぺらい男です、買い物は全部コンビニで、服は全部ユニクロで、ズリネタは綾波レイで、同人誌は壁のしか買いません、と告白しているに等しいと知れ!
 そんな『サザエさんの秘密』の対抗馬ともいえるのが『ソフィーの世界』だ。どれだけ個性的な本が並んでいようとも『ソフィーの世界』があるだけでぶち壊し!
 本棚を見た人は、あっ、結局はブームに乗って『ソフィーの世界』を慌てて買っちゃうような人なんだ…。と判断して舐めまくった態度に出るはず。そいつが勝手に冷蔵庫からコーラを出して飲み出したりしても文句は言えない。なぜなら、安易に『ソフィーの世界』を本棚に置いたキサマが全面的に悪いからだ!
 しかしだ! 『ソフィーの世界』を本棚に置きながら舐められない方法が一つだけある。それは『ソフィーの世界』の作者ヨースタイン・ゴルデルの本を揃えることである。大概の人は『ソフィーの世界』の世界の作者名なんか知らないはず。知っていたとしてもそれ以外の本のタイトルを知っているわけない。
『ソフィーの世界』以外のヨースタイン・ゴルデルを持っているのはかなりの凄みとなるはず! その迫力たるや本棚界の竹内力! これはもはや本棚という名の凶器だッ!

 ……え〜……というような思考の迷路にはまったので、ヨースタイン・ゴルデル『サーカス団長の娘』を買ってきました。さっそうと。
 子どもの頃から頭の中に無数の物語が浮かんでくる主人公が、さまざまな経験をえて大人になったとき、それらの物語を作家に売ることで生活することを思いつく。最初はうまくいっていたが、やがて物語は彼の日常を浸食していくことになり……というストーリー。物語が物語を生み出していくという、こった作りの作品だ。奇想天外で波乱に満ちていて、ぐいぐい読めるぜ!
 本作から現代小説に対する幾つもの提言や皮肉を読み取ることが可能だと思う。批評しやすい作品なので、いろいろな意見があると思うのだが、僕がいいたいのは、この本はおもしれぇぞ、オラッ! ってことだけなのだ、オラッ!
 本作から発散されまくっているメッセージは、自分自身でそいつを考えるその過程にこそ意味があるんであって、他人の意見なんかどうでもいいと僕は思うのだ。そういう作品だと思うのだ! 読む、そして考える!
 なんともまあ、作品と読者の幸せな関係を作り上げている一冊じゃありませんか!
 とにかく読んで考えろ!
 ……え〜……というわけで本はとってもおもしろかったんですが、この一冊を『ソフィーの世界』の横に並べただけではまだまだ舐められそうなオーラが出まくっているので、他の本も買ってきます!