第70回
「ヒャトゥーン ヒグマの森」を読んで羆のヤバさを知れ

 外部との連絡手段のない山小屋に取り残された男女が、凶暴な羆に襲われるという増田 俊成の小説『シャトゥーン』を読んで、羆のあまりのヤバさに悪夢を見んばかりに戦慄した。
 いやもう羆っていうか熊って、テディベアだったりボリショイサーカスだったりするわけじゃないですか。
んなもん、とんでもねーですよ、冗談じゃねぇですよ、ファック!

 超怖い! 超凶暴!
 動物が人間を襲って食べる事件を食害事件というらしいんだけど、まずこの響きが怖ろしくイヤな感じじゃないですか。食べる害の事件って。絶対に遭遇したくねぇ……。
 本作で紹介されている実際にあった羆による食害事件の例というのが、どれもこれも陰惨で強烈にもの凄かった。
 昭和四年の手塩苫前三毛別事件では、冬眠前の秋の食い貯めに失敗した熊が、六日間で八人を食い殺したそうだ。
この熊は被害者の通夜会場に現れて大暴れするという、パニック映画かよ、と思うほどの凄い奴だ。
 大正十一年の石狩沼田幌新事件では死者四人。ある一家の弟が羆に一撃で撲殺され、兄が重傷を負わされ、生きたまま土中に埋められる。
スコップで立ち向かった父親を爪で引き裂き、母親をくわえさった。母親が羆に運ばれながら念仏を唱える声が集落に響き渡ったが、あまりの恐怖に誰も助けにはいけなかったという。
 ……念仏。……怖すぎる。なにも言えねぇ!
 昭和四十年の福岡大ワンゲル部事件では死者三人。登山中の五人のパーティーを三日間にわたって一人ずつ連れ去って食い殺したそうである。
 ……三日間にわたって一人ずつ連れ去って。どんなだけ怖かっただろうかと想像するともうなんか内臓が口から出てきそうだ。
 どうですか、この羆の陰惨っぷり。半端じゃねぇよ、デンジャラス。
 そして本書では食害事件に関する羆の注意すべき生態について紹介されているのだが、これがまた目眩を覚えるほど陰惨ッ!

1、狙った獲物を執拗に追い続け、捕らえるまで絶対に諦めない。
2、獲物を埋めたり木の葉や枯れ草で隠し、後日食べにやってくる。
3、いったん手に入れた獲物に異常なまでの所有本能をみせる。
4、味をしめると満腹していても繰り返し襲う。
5、テリトリーを侵した者に怒りを示し、繰り返し報復する。
6、人間の味を覚えると、その後も人間を狙うようになる。
7、止め足など、高度な攻撃法を使いこなして、頭脳戦でも人間と対等以上に戦う。

 どうですかこの始末に負えなさっぷり! 最悪だ!
 だって一度狙われたら、満腹していたって関係なく執拗に追っかけられて、頭脳戦でも勝てないってことでしょ。悪魔かよ! っていうか悪魔だろ!
 こういった悪魔のように陰惨の動物怖さが嫌というほど表現されている『シャトゥーン』をとっとと読んで人間の殺人鬼なんか目じゃねぇ恐ろしさを知りやがれ!