第62回
驚愕して見ろ 世界大博物図鑑
 荒俣宏を時々テレビに出ている変なおっさん程度にしか考えていない奴は今すぐ反省してくれ! 泣いてお願いするから反省してくれ! おろろーん!
 荒俣宏はとんでもない男なんだってば! 世界でも類を見ない偉人だと僕は思う! 
 もはや偉人すぎてクレージーな域に達している。マジでデンジャラスな荒俣宏のヤバさをもっとみんな知るべき。
 手元に辞書なり図鑑なりがあったら、即座に手にとっていただきたい。
 タイトルに辞典とか辞書が入っているだけの200ページ程度の文庫本なら著者名が一人という場合も多いだろうけど、ページ数500を超える分厚さで、一ページが何段にも区切られている辞書や図鑑なら間違いなく○○○○監修、○○○○編纂となっているはずである。わざわざ説明する必要はないだろうが、これは複数人で書いたという意味である。
 そういった本はあまりにも作業量が多いため、到底一人で作れるものではないのだ。というか一人で作ろうという、考え自体が浮かばないジャンルの書物なのである。
 そんな常軌を逸したことをやろうと思った男がいる。やった男がいる。
 それが荒俣宏だっ!

 今手元にある全6巻『世界大博物図鑑』には堂々と荒俣宏著と印字されている。
 そう、一人で立派な図鑑を作っちまったのである。驚けッ!
 えっ? という顔でぼんやりしているボンクラ野郎は図鑑を作るという作業をリアルに想像してみるんだ!
 ジャンルにどれだけの広がりがあるのかを見極め、項目を決め、参考資料を集め、日本にない資料を海外から取り寄せ、わかりやすくまとめて文章にし、図版を決め……そういった作業をじっと想像してみるんだ。
 それがどれだけ大変かわかるだろう? わかってくれ!
 しかもただ単に動物の生態や生息域などが書かれているわけじゃねぇんだ。「名の由来」「博物誌」に「発見史」「絶滅記録」「家畜史」「美術」「神話・伝説」「民話・伝承」「ことわざ・成句」「天気予知」「星座」「文学」などの項目が付け加えられているのである。バッタの項目では仮面ライダーについてまで言及されているという念の入りよう。クレイジーにもほどがある!
 小説でならこのくらいの長編は書くことができるだろう。
 しかし図鑑である!
 己の想像を書く事が許されない世界で! 無数の資料を集めなくては成立しない世界で! これだけのブツを作り上げるなんて、いったいどれほどの情熱が必要だっただろうか? 怖ろしいッ! 真っ当な神経ではないという意味ではアウトサイダーアートの一種ではないかとさえ思えてくる。
 最終巻の総説で荒俣宏はこうつづっている。
「徹夜がもはや常態となり、平常な生活も不可能となる日々がつづいた。正直にいえば、健康に自信のない著者も、本企画を自身の手で完結させられるとは思ってもいなかった。しかしさいわいにもここまで生きのびることができ、最終巻に総説を執筆できる喜びを、いま、静かに噛みしめている」
 大げさである。大いに大げさである。
 本を作っていて死を意識するなんて異常だ。
 しかし、この図鑑を手にとってみれば、それがまったく大げさに思えないはず。
 この偉大すぎる図鑑を手にとってみろ!
 感動の戦慄を味わえッ!