第61回
大人の狂気 松本大洋『竹光侍』
 チクショーッ! 松本大洋が終わっただとか、松本大洋は過去の人だとか、『ピンポン』まではおもしろかっただとか、大麻は中毒性がないから安心だとか、同人ゲームはガッポガッポ儲かるらしいとか、塩を吹く=イクじゃないとか、イスラエルの失われた10支族は日本に来ているとか、そういった生きていく上で一切不要な知識は今すぐオナニーついでに精液と一緒にゴミ箱に捨てろッ! そして二度とかえりみるな、ボケッ!
 それとサブカル野郎どもがする松本大洋への評価にも一切、耳を貸すな、見るな!
 そんなもんを見て読む意欲をなくしたりしたら心の底からくだらねぇからな。松本大洋=オシャレ系のサブカルという概念があるなら今ずく捨てろッ! 丸めてゴミにだせ!

 というわけで松本大洋の新作『竹光侍』はおもしれぇぞぉ!
 連載で読んでいた時はうーんイマイチかなぁ、と思っていたのだが、単行本で読むとおもしれぇですよぉ、コレ!
 何がおもしろいって狂気の表現だ。
 今までの松本大洋の作品は、狂気を正面に出していた物が多かった。
 例えば、『鉄コン筋クリート』『ゼロ』の主人公はわかりやすくそうだし、『ピンポン』や『花男』だって狂気性は正面に出ている。狂気性を持ったキャラクター達とどうやって付き合っていくのか? 狂気性を持った人間は社会の中でどのように生きていくのか? というのが松本大洋の作品全体テーマの一つであったと思う。
 しかし『竹光侍』の主人公は、狂気性を内包しながらもそれをできるだけ外に出さないようにしている。
 過去のキャラクターが周囲の努力で社会に存在してたのに対して、『竹光侍』の主人公は己の努力で社会に存在しようとしているのだ。しかもその努力がイヤイヤというわけではなく、どこか楽しげにやっているのだ。
 これはとても大人的な狂気であると言えるだろう。
 本作には、思春期の魂にガツンとはこないが、大人魂にじんわりと染み渡るおもしろさがある! すっげぇおもしろいと言わないが、しみじみとはおもしろい!
 水墨画を連想させるような時代劇チックな絵もステキだし、こいつはオススメだぜ!
 
 松本大洋を未読の人はとりあえず『ピンポン』から入っとけ!
 根性と熱血と努力に満ちた熱いスポコンだ! いいか! 松本大洋はサブカルのおもちゃじゃねぇ! 本気の漫画家だ! そいつだけは覚えて帰っていってください! んじゃ、また!