第52回
入江亜季は群青学舎から読めッ!
 大晦日の夜に、例によって曙か永田さんがKOをされるのをファックファックとつぶやきながら見終えて、今年最後のオナニーでもぶっこいて寝るか……そんなことを思った瞬間、心に舞い降りた刹那の空白の時間に僕はきっとこう思うだろう。
 ……今年の漫画界で一番の新人は入江亜季だったな、と。
 というわけで今回紹介するのは、入江亜季の同時に発売された二冊の単行本『コダマの谷 王立大学騒乱劇』『群青学舎』だぜ!

『コダマの谷 王立大学騒乱劇』は周囲から隔離された王立の大学を舞台にした架空歴史物。『群青学舎』はいろいろなタイプの作品が収録された短編集。
 正直な話、『コダマの谷』は作者の思いは伝わってくるし、部分部分にギランギランに光るものを感じるものの、同人誌で発表されていた作品なせいか、はっきり言って読みづらい! この作品だけを読んで入江亜季ってこういう漫画家なんだぁ、と思われるのは嫌なので、まずは『群青学舎』から読むように! 約束だっ!
 前に書いたが『群青学舎』にはいろいろなタイプの作品が収録されている。
 懐かしさと不思議さにあふれた小学校の物語。中世の修道院を舞台にした勝ち気なお姫様の物語。森で生活するお婆さんの日常、ほれ薬を飲まされた男女の葛藤、などなど。そしてどれもこれもレベルが高い。
 まずなんと言っても絵が素晴らしいッ!
 この奥行きのある繊細で美しい絵はなんなんでしょうか!
 絵の説得力がとにかく半端じゃないのだ。
 そのコマにこめられた意味が、ずるりっ、とすんなりと頭に入ってくるのである。
 絵によって物語をしっかり表現できているというか、絵がしっかりと物語を語っているというか。
 まんがって、こういうストーリーをしっかり表現できるものなんだな、そんなことを改めて思わせていただいた。
 無論、そのように素晴らしい絵によって作られたストーリーも素晴らしいのだ。
 物語として完結しつつも見事なまでに余韻を残すのである。
 その物語で描かれた話をきっかけにして、物語内の世界が一気に脳内に広がるのだ。
 長編になりそうなネタをこんなにガンガン使ってしまっていいんッスかね、マジで!
 余韻がしっかりと残るからこそ、その世界を味わいたいがために何度も何度も読み直してしまいたくなる魅力を本作は持っている。
 諸君らも早急に入江亜季の世界に飛び込め!
 そして大晦日に一緒につぶやこう!
 ……今年の漫画界で一番の新人は入江亜季だったな、と。