第39回
幸せ関係『空の中』
 有川浩はいいなぁ!
 ライトノベルほど軽くないし、一般的なSF(変な言い方かもしれんが雰囲気でわかれ)より重くない。その中間と言ったらいいのか、ちょっとだけ大人になったライトノベルというか。
 軽すぎるのも嫌だけど重すぎるのも嫌なのよ……そんな気まぐれ少女のような諸君らの欲求にズバンと答えてくれる作品を有川浩は書き続けている。

 どの作品もおもしろいのだが、今回は『空の中』を紹介するぜ!
 2万メートル上空で発生した2度の航空機事故。いったい空で何がおこったのか? その謎をさぐるために航空自衛隊が動き出す……。同じ頃、高知の海岸で男子高校生がクラゲに似た謎の生命体と接触していた。果たして二つの事件はどうリンクしていくのか? というストーリーだ。
 謎の生命体とのファーストコンタクト物なんだが、これが素晴らしくいい!
 人間と思考回路の違う知的生命体とコンタクトする苦労や、謎の生命体を巡る人々の葛藤などに説得力があるのだ。ここらへんは実に真っ当なSFである。
 そしてその一方で実に真っ当な萌え小説でもあるのだ。
 心配性の幼なじみ。普段は素っ気なくツンツンしているくせに可愛らしい一面を無自覚に見せてしまう女性パイロット。好戦的で内面に傷を持つ少女。
 かなりの萌えっぷりだが、これらは変に装飾された萌えではなく、原形そのものに近い嫌みのない萌えなのである。
 SF方面でも萌え方面でもマニアックな方向には走らず、この二つを適度な場所で融合させている。こう書くと薄い作品のように思われてしまうかもしれないが、そうではい。要所要所でしっかりとマニア心をくすぐるツボを的確についてくれるのだ。
 この壮絶なまでないい塩梅っぷり!
 世界観とキャラクターが幸せな関係を築いた作品だといえるだろう。
 有川浩の他の作品でもこの幸せ関係が築かれているが、『空の中』はその中でも抜群に幸せだ!
 とにかく読んでおけ、オラ!