第38回
怪談の科学
 イーッヤッハァ! オレ達はオカルトが好きだ! 
 あえてオレ達と言ってやるぜ! 
 そうだオレ達だ! そうだろうオレ達? なっ?
 小説を読んでも、漫画を読んでも、アニメを見ても、ゲームをやっても、出てくる出てくる、宇宙人に超能力者に未来人! もはや総涼宮ハルヒ化ですよ!
 一億総涼宮ハルヒですよ! 鼻っぱしらの強い女をなぐりながらファックするのが男の生きがいさ〜! 国家が好きなコーラはコッカコーラですよ! ダハハハハ!
 と、まぁ無理矢理テンションを上げてみたが、とにかくオカルト的なものが好きだ。そして、それと同時にそういった作品を読んでいる人の多くが、オカルト的なものが現実には存在しないことも知っているだろう。
 だって、んなわけねぇもん! なっ? 超能力でスプーンは曲がらねぇんですよ! 気で人間は吹っ飛ばねぇですよ! 犯人を見つけても胸はキュンと鳴らねぇですよ!
 好きだけど存在しないって知っている、そんな矛盾とも言えない程度の体内の温度差にズシンときやがるのが今回紹介する中村希明『怪談の科学』だ!
 本作は幽霊がなぜ現れるのか? ということに合理的な説明をビシバシしていく一冊である!
 もう強烈におもしろい!
 幽霊を見た、という実話を引用しながら、それは……

 高速道路で運転手が見る幽霊は、高速道路睡眠現象による幻覚である。
 病院の集中治療室で見る幽霊は、感覚遮断性幻覚である。
 砂漠や海を探検する人が見る幽霊は、孤立性幻覚である。
 吹雪などで視界が閉ざされた時に見る幽霊は、感覚遮断性幻覚である。
 と次々、断じていくのである。痛快ッ!
「いや、もう、見たんだって、幽霊。超見た」なんて人がいたって「はい、それは感覚遮断性幻覚ね」でケリをつけていくようなこの姿勢、カッコイイ! そして説得力がある。
 そしてこの姿勢は物語にも向けれていくのだ。
 幽霊が登場する物語を現代の視線から、合理的に解釈していくのである。
 物語の幽霊は物語内リアルの幽霊なんだから、んなもん無理だろう! と思ってまうかと思うが、そうではないのだ。
 優れた作品は科学的な説明ができるほど、現実に則しているのだという。
 というわけで中村先生は『怪談』『雨月物語』『四谷怪談』といった日本の古典的な物語だけでなく『ブルターク英雄伝』ポーの『大鴉』『ファウスト』『ハムレット』といった海外の古典まで合理的に説明していくのだ。なんとまぁ!
 ブルータスは極度の睡眠不足で悪霊を見たのかよ!
 ちなみに『四谷怪談』は「精神医学的にみて実話よりはるからに事実らしい、心理学的現実性をもっているといえる」らしい。
 なぜ物語まで取り上げるのかというか「精神病理学はこのように、実際に存在する対象によって起こる知覚も、実際には存在しないのにあたかも存在しているように感じる幻覚も、われわれが名作を読んで心の中に描き出す表象も、人の心の中に起こるあらゆるできごと(心理学的現象)のすべてを取り扱う学問」だからだそうなのである。
 なんとまぁ素敵な学問!
 どんな現象が発生しようが、どんな物語に感動しようが、全部、脳の問題なんですね、先生!
 この物語と現実の間に生まれる不思議なおもしろさ!
 中村先生には是非、この姿勢でライトノベルを読んで頂きたい。
 ハルヒを読んでそこで起こる不思議現象を合理的に解釈していただきたい。……全部、感覚遮断性幻覚で断じられそうな気がするけど。いや、もっと怖いオチになりそう気もするなぁ。
 とりあえず萌えの概念から中村先生に叩き込もうぜ、みんな! んっ? みんなって誰だ? 誰だ? おまえだ! おまえ? あれ、おまえって……誰だ?
 あれ? なんでこっち見てるんだ。こっち見るなおまえ!